賞味期限(しょうみきげん)は、「美味しく食べることができる期限」。
消費期限(しょうひきげん)は、「安全に食べられる期限であり、期限を過ぎたら食べない方が良い」ことを意味します。
安全で美味しい食品を食べることと関係が
あるのは、何となく分かりますが・・。
ただ、賞味期限が具体的にどのようにして決められるのか?
そもそも、どういう理由で賞味期限が制定
されるようになったのか?
また、
それは、いつから実施されたのか?
などなど・・、色々と分からないことが浮かんできました。
今回、賞味期限に関する基本事項をできるだけ分かりやすくまとめてみました。
- 賞味期限とは?
- 賞味期限の決め方
- 賞味期限が制定された理由
- 賞味期限は、いつから設定されたのか?
上記のような内容について書いています。
賞味期限とは?
賞味期限の定義
食品衛生法(厚生労働省)による「品質保持期限」と
JAS法で使われていた「賞味期限」の用語が
平成15年(2003年)7月に
「賞味期限」に統一
されて再定義されています。
用語としては、統一されていますが、
これまで定義されてきた内容は、完全に廃止
されているわけではありません。
そのため、現在の「賞味期限」の定義としては
これまで使われてきた「品質保持期限」の定義と
JAS法で決められている「賞味期限」の定義、
なおかつ、平成15年の用語統一後に追加された
内容を総合的に判断する必要があります。
- 定められた方法による保存
- 品質保持が十分可能と認められる期限(年月日)
- 開封しない状態
- 表示された保存方法(正しい保存方法)
- 期待されるすべての品質特性十分に保持(味と品質についての設定)
賞味期限の決め方は?
賞味期限の決め方についても、これまでの
食品衛生法における「品質保持期限」の設定方法と
JAS法における「賞味期限」の設定方法の両方の要素は
引き継がれます。
衛生管理の状態、保存方法等の諸要素により左右されるので、
期限の設定にあたっては、当該食品等に関する知識を
有する者が設定すべきものであることから、
基本的には製造又は加工を行う営業者が行うものであること。期限の設定は、食品の特性等に応じて、微生物試験や
理化学試験及び官能検査の結果等に基づき、科学的・
合理的に行う。なお、品質保持期限の設定は、食品等の製造後、
定められた方法により保存した場合において、腐敗、
変敗その他の食品等の劣化に伴う衛生上の危害が
発生するおそれがないと認められる期間の終期より
十分に余裕をもって行うものであること。
このように定められており、
食品の特性に応じて微生物試験や理化学試験、
官能検査の結果に基づき科学的、合理的に行う
必要があると食品衛生法では規定されています。
あり、当該製品に責任を負う製造業者等が科学的、
合理的根拠をもって適正に設定すべきものである。この場合、「賞味期限」の設定は、摂取可能であると
期待される品質を有すると認められる期限の場合より
短いものとなる。期限の設定に当たって製造業者等は、食品の特性に
応じて、理化学試験、細菌試験、官能試験等を行う
とともに、これまでの経験や知識等を有効に活用
することが必要。
JAS法でも、食品衛生法の品質保持期限の設定方法と
同様に、食品の特性に応じた、理化学試験、細菌試験、
官能試験等を行って設定するようになっています。
上記に記載されている理化学試験、細菌試験、
微生物試験、官能検査などについても、
食品期限表示の設定のためのガイドラインの中では
触れられています。
理化学試験
食品が製造されてから品質が劣化することを
理化学的な分析を用いて評価する方法です。
具体的には、
- 粘度(ねんど)
- 濁度(だくど)
- 比重
- 過酸化物価
- 酸価(油脂の精製および変質の指標となる数値で、酸化とは異なります。)
- pH(ペーハー)
- 酸度
- 栄養成分
- 糖度
などを、製造年月日から経過した測定値を比較することで分析します。
微生物試験
食品が製造されてからの品質の劣化を微生物学的に
評価をしたものです。
具体的には、
- 一般生菌数
- 大腸菌群数
- 大腸菌数
- 低温細菌残存の有無
- 芽胞菌の残存の有無
などを、食品の種類や製造方法、温度や時間、
包装などによる保存条件に応じた試験を行うことで分析します。
官能検査
食品の性質を人間の感覚(視覚、味覚、嗅覚など)を
通して評価します。
人間の感覚が用いられる方法であるため
誤差が生じる可能性がありますが、それでも
この方法が採用される意義はあります。
測定機器では、判断(感知)できないような
要素を見抜く人間の感性に委ねられた検査となっています。
ざっくり言うと、複数の人が実際に食べて行います。
ある意味、ヤバイ検査です。
意外と分析機器よりも精確だったりして(^_^;)
具体的には、
- 適切にコントロールされた条件下で実施
- 適切な被検者
- 的確な手法(視覚、味覚、嗅覚などを使う)
- 統計学的な解析
主観的になりがちな人間の感覚をできるだけ
客観的に分析できるよう統計処理することが
必要です。
誰が決めるのか
賞味期限は、最終的に誰が決めるのか?
製造業者が賞味期限を決める
ということになります。
賞味期限を決定する基準になる検査をするのは
「食品微生物センター」などの専門の検査機関です。
文書で発行される検査結果の詳細(報告書)をもとに
製造業者等が決定するのが、一般的な賞味期限の設定方法です。
”等”の部分に当てはまるのが輸入業者
ということになります。
具体的な専門機関による検査とは?
実際は、製造業者が、賞味期限を検査する専門の機関に
依頼して決めていくという流れになっています。
専門の機関とは、例えば神奈川県にある
「食品微生物センター」などのことです。
ちなみに、この機関は全国対応しています。
具体的な検査方法のご紹介
お菓子(バウムクーヘン)の検査についてご紹介。
- 検査申込み(ネットなどでOK)
- 検査品を検査機関へ発送
検査品は、この場合バウムクーヘン - 検査
常温保存で実施し、10日間、20日間、30日間、
38日間というふうに一定期間保存しながら
真菌や黄色ブドウ球菌などの発生を検査します。 - 検査の速報メール・FAXで連絡
- コンサルティング
検査結果をもとに、専門のスタッフが
商品の賞味期限・消費期限設定のアドバイスを実施。 - 報告書(原本は郵送されます。)
賞味期限と品質保持期限の関係は?
元々、食品衛生法の「品質保持期限」の用語、
JAS法では「賞味期限」の用語が使われていました。
※JAS法は、「農林物資の規格化及び品質表示の
適正化に関する法律」のことで農林水産省が設定しています。
食品衛生法で使われていた「品質保持期限」の用語が
平成15年(2003年)7月に「賞味期限」に統一されました。
賞味期限が制定された理由
大きく3つが指摘されています。
①食品ロスの問題
普通に考えれば、美味しく食べることができる期間が
賞味期限なので、何の問題も無いように思いますが、
賞味期限が無いとどうなるのか?
これはですね、製造年月日の新しいものを
求める消費者心理が湧き上がってしまい、
一日でも古いと買われなくなります。
そして、買われないと製造業者へ返品!!
全く問題なく、食べられるようなもの
例えば(缶詰、カップラーメンなど)までが
返品されていまします。
大量の食品ロスが発生!
そもそも、賞味期限が制定される食品などは
安全に食べられる期間が長いものがほとんどです。
そのため、安全に美味しく食べられる期間を
明示させることで、このような食品ロスや
製造業者への負担を軽減させるメリットがあります。
もちろん、我々消費者にとっても有り難いですよね。
②海外からの輸入食品の問題
こちらも上記と同じような問題が生じます。
海外では、賞味期限の設定が当たり前であり
日本が賞味期限を導入する前に行っていた
「製造年月日の記載」のみを行わせることは
自由貿易を行う上での障壁となります。
輸入する際には、それなりの日数もかかるため
製造年月日だけの記載では、輸入食品が
圧倒的に不利になるからです。
そのため、諸外国から賞味期限の導入が強く要望されました。
③食品製造メーカーの負担の問題
製造年月日だけの記載の場合は、
製造年月日が一日でも古いと返品のリスクが
高まります。
そのため、深夜0時を回ってからの操業を
行い、日にちを新しくする製造を続ける必要がありました。
当時、牛乳メーカーなどの深夜操業が続き
従事者への負担が問題となっていました。
その他の問題
賞味期限ではなく、製造年月日だけの場合には
こんな問題もあります。
それは、いつできたのかを明示しにくもの
例えば、納豆やキムチ、ヨーグルトなどです。
店頭に並んでから発酵が進むことを想定して
製造してある納豆などに関しては尚更です。
極端な例では、納豆が製造ラインで詰められた
時にすぐに開けて食べるとどうなるか?
発酵が進んでいないため納豆とは言えない
状態のものを食べることになります(^_^;)
製造年月日だけでは、難しい問題があったため
賞味期限が設定されることになっています。
いつから設定?
上記のように製造年月日だけの表示では
色々な問題が生じたため平成7年(1995年)に
賞味期限の表示がスタートしています。